「開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちばなし)」
物語は皇室が京都と吉野に分裂・対立していた南北朝が、室町三代将軍足利義満によってひとまず統一された(「南北朝合一」、1392年)ものの、引き続き不満を残した旧南朝方の公家や武士たちが、義満や四代将軍義持らに対して抵抗を続けていた頃、いわゆる「後南朝」といわれる時期の譚(はなし)である
(あらすじや配役は国立劇場で配っているチラシの裏をご参照あれ)

やっぱり市井のワルをやらせたら今の菊五郎は最高!
もちろん吉野山の仙女九六媛(くろひめ)として、例のレディ・ガガそのままの奇抜な衣装も良かったが、なんと言っても善良な商人を装いながら実は盗賊稼業の木綿張荷次郎(ゆうばりにじろう)の菊五郎のスゴミがいい
座敷に座っていても、笠を持って歩いても、そしてもちろん見得をきっても圧倒的な存在感と役の性根がリアルに表現される、そんな迫力がある
時蔵が扮する大名奥方長総(ながふさ)、そしてそのなれの果て荷次郎の妻おふさ。 個別に見ればド迫力の女形だが物語りを通しての性格付けが余りに無節操でやや興ざめだったのがもったいない
そして菊之助、若侍をやっても姑摩姫をやっても美しい。もちろん父、菊五郎と比べると線が細くは感じるが、それにも増して役者としての独特の存在感があって素晴らしい
なんといっても舞台両花道上空を菊五郎の九六媛と、菊之助の姑摩姫の二人同時の宙乗りが「驚奇」且つ華やかであった
今回は「南総里見八犬伝」で有名な曲亭馬琴作品の復活通し狂言としての意義や菊五郎の工夫を凝らした衣装、そして音羽屋父子の揃い宙乗りなどのみどころはあったが、前述のとおり長総の性格の無稽さや、お芝居後半での盛り上がり不足など、全体としてはやや中途半端な舞台だった気がする
とは言え、菊五郎の圧倒的な存在感と台詞回しの素晴らしさ、そしてこれぞ歌舞伎と思わせる声質、それらを間近に生で見られたことで、十分に満足できた
美しい菊之助、彼の独特の声質、渋谷のコクーン(盟三五大切)以来であったが、こちらもたっぷりと堪能した
10月27日まで国立劇場で
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