国立劇場の「花形名作舞踊鑑賞会」で長唄 「二人椀久(ににんわんきゅう)」を観た

花柳寿楽(はなやぎじゅらく)の椀屋久兵衛(わんやきゅうべい)、中村梅彌(うめや)の傾城松山という豪華な組み合わせ
長唄は四挺四枚(三味線4挺に唄方4人)に加えて、お囃子も5人と豪華な仕立て!
松山太夫に色狂いした挙句、座敷牢に閉じ込められていた椀久が大阪の町に彷徨いだす
そこに松山の幻が現れ、二人の舞が妖しく交錯する
舞踊の美しさをどう表現すればいいのか、自分には適切な言葉が思い浮かばないが、これほど感動した舞踊の舞台は初めてだった。しなやかで、時に妖しくときに哀愁に満ちた体や手のしなやかな動き
着物や舞台背景の美しさ。そしてこれぞプロの演奏、プロの楽器としかいいようのない美しい長唄の響き
終盤近くに松山が再び舞台背景に幻想的に消えて、舞台に独り残された椀久の喪失感。思わず涙が出そうになった
坂東流の舞踊家でテニス仲間でもある友人が昨年に解体間近の歌舞伎座で「二人椀久」を躍った(友人は椀久役)
前年の秋、文楽鑑賞ツアーを企画して大阪の国立文楽劇場にみんなで行った折に、彼女らの公演の成功を祈るために
上本町(天王寺区)にある實相寺に実在する椀久・松山のお墓を訪ねた

左は椀屋久右衛門(物語では久兵衛)、右が遊女松山のお墓。
因みにみんなで見た文楽は「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ」と「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)
さて、名作鑑賞会では椀久の前に常磐津の「雷船頭」と清元「隆盛」が出た
元来、清元は余り好きではないのだが、今日の清元美寿太夫(よしじゅだゆう)はとても良かった
五條詠佳(ごじょうえいか)の流星、というか、雷親子三人と婆雷を一人4役で踊り分けるのも見事だった
その次の常磐津もともて良かった
そして何より藤間清継の女船頭が超色っぽくてゾクゾクした
司会の市山松扇(いちやましょうせん)が「言われなければ、男とは気がつかないかもしれない」と説明してくれたが、本当にそうだった。言われても男だとは思えなかった・・・。
流星も雷船頭もまさに真夏のこの時期にふさわしい涼感溢れる出し物で心から楽しめた
そして、最後に幻想的な二人椀久。 三味線弾きにとっては聞きしに勝る難曲ぶりを今日も間近に聞いたが、いずれは弾いてみたい曲だ
昔の女を夢に見る椀久、昔の男、安珍を捜し求めて白拍子の姿となって道成寺の鐘を再び訪ねてくる清姫
どこか曲想に相通じるものを感じたが、この感覚を生かせる日がいつかくることを祈りつつ、国立を後にした
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